会長のマンスリーメッセージ

会長マンスリー
2022.04

新しい資本主義のもと、すべての看護職の給与アップを

 長い間、公定価格で低く抑えられてきた看護職の給与が上がる背景とは何か、新しい資本主義とは、どのようなことを言うのだろうか。

 2021年11月に200万人の看護職の給与が上がる!というニュ―スが、突然耳に飛び込んできた。唐突感のある出来事に大変驚かされたが、やっと見直されるのかという喜びが増した。看護職の給与アップの背景にあるのは、「成長」と「分配」の好循環である。これは何を指すのか、新しい資本主義とは何を言うのか、給与アップの背景を考えてみたい。

【看護職の給与が上がる】

 2021年自民党総裁選挙において、当時候補者であった岸田文雄議員は「成長」と「分配」の「新しい資本主義の構築を目指す」という考え方を示した。 

 この新しい資本主義については、2020年9月11日、自由民主党総裁選挙へ出馬する際に出版された著書『岸田ビジョン 分断から協調へ』において、次のように述べられていた。

 成長戦略としては四本柱が掲げられている。

 1.科学技術によるイノベーション 

 2.デジタル田園都市国家構想による地方活性化 

 3.カーボンニュートラルの実現 

 4.経済安全保障の確立である。

一方、主な分配戦略には三項目をあげている。

 1.働く人への分配機能の強化、

 2.中間層の拡大と少子化対策、

 3.看護・介護・保育などの現場に働く人の収入増

 分配戦略の3番目に私たちの職種があった。当初、急性期医療を担う限定的な医療機関で働く20万の看護職に3%程度(1万2千円位)の給与を引上げるという内容から、もっと多くの看護職を対象にと言う看護連盟・協会・関係諸団体の要望により、1%程度(4千円くらい)が57万人に支給されることとなり、2月から9月までの間は国の財政から拠出されることが決まった。10月以降は、1%を3%程度にして診療報酬に上乗せすることが閣議決定された。診療報酬での対応について、現在「入院・外来医療等の調査・評価分科会」において、検討が開始された。そこでは、看護の処遇改善に係る診療報酬上の対応に向けた技術的検討において、必要な調査・分析を行うために、特別調査の実施が検討されている。調査結果を踏まえ、中央社会保険医療協議会で議論される。

 工程は、8月に諮問・答申、9月に公示、10月診療報酬改定の実施という段取りになるそうだ。

【新しい資本主義】

 資本主義とは、個人が自由にお金儲けをしてもいいと言う社会を目指し、社会主義は、お金や土地は国家が管理し、みんなで平等に分けようという社会を目指すものというイメージだ。

 資本主義の歴史の中で、同じ形であったことは一つもないと言われる通り、これまで各国は、資本を使ってより良い社会をつくり、便利さ、豊かさ、効率性を目指してきたが、これ以降の成熟社会においては、カーボンニュートラルや科学技術のイノベーションで、これまでの常識や価値観から脱出し、さらなるバージョンアップを図ろうというのが、この新たな資本主義の考え方ということである。

 例えば、気候変動。お金を稼ぐことだけを考えていると、地球に負荷をかける状況が科学的に解明されてきた。故に、バランスをとるための課題を解決することを成長のビジネスとし、これまでの経済界の常識“環境問題に目を配ると利益を減らす”という考えや価値観を変えて、新たな価値を創り出す。問題解決がビジネスにならないか、これまでのビジネスモデルにビルトインできないか、を考える社会づくりをすることが新たな資本主義。そして得た利益で企業が成長し、働く人に分配すれば、消費が促進され、経済が上向く。企業はさらに成長を続け、社会の中に好循環を生みだす。

 課題解決は、人にしかできない。人を育て技術を磨く視点を太い理念として、目に見える資産だけでない新たな価値の創造を目指し身につけるのが、新たな資本主義。コストという概念を投資に変える概念づくりは、文字制限があり書ききれない。6月までには、政府から新たな資本主義のグランドデザインの発表があると聞く。看護理論を構成する4本柱、人間・健康・看護・環境に近づく政策を大いに期待したい。

【すべての看護職に給与アップを】

 看護職の給与アップは、こういう様々な背景と新たな政策課題の中で進んでいる。日本看護協会が2012年に行った「病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書」を見れば、看護職の給与実態が分かる。いのちの最前線で働く看護職が、適正な評価を受けていない実像が見て取れるのだ。しかし、その結果はさて置き、今回注目されたのは、COVID-19感染症によって「看護」という職業の持つ重要性に社会の人々が気づき、エッセンシャルワーカーとしての不動の位置を占めたことも背景としてある。これは、全国で先のみえない闘いを続ける看護職へのエールになったであろう。

 しかしながら、これは途中段階である。すべての看護職の給与アップこそが目指すべきところである。

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