会長のマンスリーメッセージ

会長マンスリー
2022.03

自民党参議院政策審議会で看護系5団体が要望書

ロシア軍におけるウクライナ侵攻が開始され、連日のニュース映像に心が痛みます。 

電光石火に首都キエフ攻撃、多くの人が涙ながらに語る『死にたくない』の言葉や、故郷を追われる姿に、為すすべのない自分は無力で、せめてもの思いで大使館に寄付を送る術しかありません。 

そして、ゼレンスキー大統領のスマホ片手に発信されるリアルは、時代の変化を感ぜずにはいられませんし、ロシア側のSNSのフェイク動画は、12年前のものが使われているということにも、よく見つけられたものだと感心しつつ、正しくものを見極める力が私たちに試されているように思えてなりません。そして、第三次世界大戦に発展しないことを、ひたすら祈らずにはいられません。 

3月9日は、正午から参議院本館(東京都)にて「参議院自民党政策審議会(各種業界団体ヒアリング)」が開催され現実に引き戻されました。この日は、看護関係団体からのヒアリングでした。冒頭、藤井基之政策審議会長が『解散のない6年間を任期とする参議院は、職域の代表と地域代表の議員からなるので、各種業界団体より現状や課題等について伺います』とのご挨拶があり、古賀友一郎政策審議会副会長の司会で始まりました。 

あいさつする藤井基之政策審議会長

この会の企画者である石田まさひろ参議院議員は、東日本大震災復興特別委員会と重なり中盤からの参加となりましたが、看護界のコロナに対応する長く厳しい現状と、友納理緒さんが看護界代表として連盟組織から推薦されたとご挨拶されました。 

あいさつする石田まさひろ参議院議員

団体ヒアリングの参加者は、看護関係5団体の代表でしたが、その要望内容と、参議院自民党政策審議会に出席した議員からの質問と回答、そして意見交換は、このWEBサイトのニュース・ページに掲載しておりますので、ご覧いただきたいと思います。参議員議員の方々が、看護についてどのような理解を持ちご発言くださっているかがわかります。各団体が広く看護政策の立案の要望文書を提出し、主張したこともご確認いただきたいと思います。 

各団体が要望を説明するにあたってあいさつ

5団体が図らずも共通していたのは、看護職の処遇改善に関する要望でしたので、その内容だけピックアップしてみました。 

日本看護協会の福井トシ子会長は、168万人すべての看護職員の処遇改善の実現を、40~44歳代の賃金実態が、時間外勤務手当と夜勤手当を含んでも一般職の給与と7万4千円の差があることと、人事院「職種別民間給与実態調査」を見た時、看護管理者の給与が事務部長と15万7千円の差があることを、図表とグラフを使って丁寧に説明されました。 

要望の説明をする日本看護協会の福井会長

日本助産師会の安達久美子副会長は、新型コロナウイルスの蔓延が長引く中、重症化しやすい妊産婦等をケアする助産師自体が「感染しない・感染させない」生活を継続しながら、業務を継続することに疲弊している状況が各地から報告されているので、確実なベースアップをはかられたいと結びました。 

また、日本精神科看護協会の吉川隆博会長は「精神科医療機関における看護職員に関しても雇用管理等の環境整備とともに、賃金引上げにつながるよう、処遇改善に加えていただきたい」と、病棟内のソーシャルディスタンスの確保、アルコール等消毒剤設置、マスク装着等の徹底が難しく、看護職員には業務量や業務時間の増加等の大きな負担がかかっていることから、精神科医療機関も新型コロナ感染症の対応の一翼を担っていることを明確に発言されました。 

日本訪問看護財団の佐藤美穂子常務理事は、病院から小規模の訪問看護事業所への転職には、給与や処遇面が下がる等の理由で戸惑いがある。訪問看護ステーションの収入の80%が人件費であることから、給与引き上げの財源として診療報酬・介護報酬による処遇改善の措置、そして、24時間対応、緊急訪問、夜間・早朝・深夜訪問、在宅看取り、医療依存度の高い小児、感染症患者への訪問看護を高く評価した報酬設定に、専門職としてのキャリアラダーに見合った給与の引き上げについて要望されました。 

全国訪問看護事業協会の中島朋子常務理事は「訪問看護師の早急で大幅な人材確保と賃上げ等勤務環境の改善」として、訪問看護師の月額賃金の引上げ、就業継続ができる勤務環境の整備、また訪問看護に従事したいと希望する病院等で勤務する看護師や潜在看護師、新人看護師が安心して就職できる勤務環境の整備を望まれました。 

 日本看護連盟は、2月末から『処遇改善手当で4000円が付いた』というご意見をいただく中で、求めているのは基本給アップであって、「手当」で終わらせることがあってはならないし、4月からの定期昇給に一緒にされることがない様に、しっかりと現場で確認する目を持っていただくことが必要と考えています。この処遇改善手当が看護職以外の職種にも手当できる、柔軟な対応を示した内容であることが、更に現場の混乱を来していることもこの場を借りて発言しました。 

また、今回の賃金アップが57万人の看護職だけを対象にしている中で、該当しない看護職も必ず上がるという希望を与える政策を求めました。これを実現するための看護職の行動は、7月の参議院選挙で看護職一人ひとりが、確実に投票に行くことです。そして、看護職代表の友納理緒さんが高得票を得られれば、看護職の本気度が社会に伝わり、168万人に確実な賃金アップが実現できることでしょう。諦めずに頑張りましょう! 

最後に西田昌司政策審議副会長が、医療における診療報酬の引き上げのたびに、国費である税金が使われているかの如く言われるが、昭和40年代より国債の発行により賄われ続けている。世界中に国債発行がゼロの国はない。今後、財政政策検討本部を立ち上げ、国全体として医療財政の在り様を検討してゆくつもりである、とのご発言がありました。 

超高齢多死社会に遭遇しているわが国においては、社会保障費の高騰が社会問題とされる傾向が強く、その中での看護職の処遇改善を要望することに多少の心苦しさを覚えた人もあったかもしれません。しかし、財政のあり方を世界的な視野で検討することを前提にするこの発言から、すべての看護職の賃金アップの要求は、長い間、公定価格で抑えられてきた看護職の正当な要求であると共に、看護職の仕事が適正に評価される千載一遇のチャンスと考えています。

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