会長のマンスリーメッセージ

会長マンスリー
2021.06

支え合いながら、潜在看護師の復職も期待しながら、この難局を乗り越えましょう

ワクチンの打ち手不足という報道と実態のギャップ

ワクチン接種が医療従事者から高齢者・企業・学校へと順調に拡がっています。

皆様には、接種券が届いているでしょうか。

私は、待ち望んだ1回目の予約がとれ、それだけでもホッとしています。友人、知人の話によれば、接種は極めて整然と行われているようで、筋注後20分の様子観察をしても30~60分の所要時間で帰宅できているようです。

マスコミが打ち手不足を報じているので、看護連盟本部の看護職全員、私も含めて「安全なワクチン接種 実技講習会」の研修を受けました。必要があれば出向いて協力したいと考えたからです。研修現場でわかったことは、現在、看護職の打ち手として再教育を受けている潜在看護師はたくさん登録されているのに、オファーがなく待機状態だというのです。都道府県によっては、打ち手の登録を打ち切り、お断りしているということもわかりました。薬剤師や臨床検査技師も打ち手に……という話は、全く不要のようで、むしろ周辺業務(ワクチンの調製・シリンジへの充填作業、接種後の健康観察など)をサポートしてほしいという要望が強いようです。

ではなぜ、そのようなマッチングの不具合が起こっているのでしょうか? 

ワクチン接種事業から見える連盟活動

“新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を推進するための各医療関係職種の専門性を踏まえた対応の在り方等に関する検討会”(5月31日資料)で、ワクチン接種に係る看護職確保等の資料が出されました。

 COVID-19の拡大につれ自治体の業務が多忙を極めていることは、多くの国民が知るところですが、そこに国策事業のワクチン接種を、今いる職員で実施するのは、余りに過酷で困難ではないか。その判断から、2つの方向を考えたようです。

1つ目は、イベント業者への委託です。

コロナ渦でコンサートや集会も中止になっているため、イベントを請け負う業者にとっては、ありがたい依頼でしょうが、打ち手を集めなければならないことは、今まで扱ったこともなく少し勝手が違っているのでしょう。

2つ目は、労働者派遣事業者が特別措置法に従って、打ち手の看護職を派遣する契約を自治体と結ぶという方法です。

ところが、イベント業者も派遣業者も“看護職の紹介は、無料職業紹介所の「ナースセンター」に求人登録を行えば受けられる”という情報を持っていません。全国的にナースセンターの認知度が低いのです。したがって、有料職業紹介所を通して看護師の紹介を受け、打ち手が足りないと信用にかかわるので、高額な時給で募集をしても確保ができない「打ち手不足」という状況が起きて報道されているようです。

病院で働く看護職が、ワクチン接種の時給につられて辞めているとワイドショーのコメンテーターが発言していますが、もともとの派遣看護職が、病院勤務からワクチン接種業務に勤務替えしたということではないかとも推察されます。

いずれにしても、打ち手の看護職は、ナースセンターに登録されています。このナースセンターのことを、政府広報で広めていただきたいと思いますし、このような正しい情報発信が連盟活動の一つになると考えます。

早く臨床現場を正常な業務ができる状態へ

自治体の負担を減らしながら、ワクチン接種を行きわたらせることは、現状を打破する重要な課題です。それに潜在看護師が動き出し、これをきっかけに再就職に結びつくのであれば、看護界のみならず社会にとっても有益ではないでしょうか。

多くの看護職は、とても真面目に使命感を持って働いていますが、人々から特別に感謝されたり、エッセンシャルワーカーだと拍手してくださったりするニュースに触れると、普通に仕事をしているだけなのに……と面映ゆく感じている人もいます。

高額の時給につられて退職をするという価値観の看護職がいても不思議ではありません。看護職の給与は労働に見合っていない現状があります。一方で、自分のキャリアをしっかり積み上げ、自らの生涯給与を考える人もいます。確かに、今回のコロナ感染は、臨床看護職にとって今まで体験したことのない出来事で、本当に現場は大変でした。これから先も、その大変さがなくなることはないかもしれませんが、支えあいながら知恵を結集して、乗り越えていけることを期待しています。

ワクチン接種を終えた人が人口の7割を超すと感染拡大を抑止しやすい「集団免疫」に近づくといわれています。そういう状況をできるだけ早くつくることが、臨床現場を正常業務に戻すことに繋がると考えています。

そして、これからは、ワクチン接種を受けない人への配慮が必要です。一部の企業では、退職勧告を受けたとの報道もありました。様々な理由で拒否する権利もあることを認めながら、安全で安心な社会へと進んでまいりましょう。

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