会長のマンスリーメッセージ

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2021.05

「看護の日」の5月12日はナイチンゲールのお誕生日

5月の長い連休が終わり、緊急事態宣言が4都府県から9都府県に拡大し、31日まで(沖縄県は6月20日まで)延長されることになりました。臨床現場の多忙さと大変さを思うと心が痛みますが、世の中では、予防接種の予約システムに不備があると、多くのメディアが報じています。

特例として、歯科医や薬剤師にも筋注の技術指導を行い、実施できるようにするといい、歯科医師は始めています。薬剤師が注射という医療行為をするには、法改正が必要となるため、現場では、注射に至るまでの行為を依頼する方向で動いているようです。さながら医療界の働き方改革、ワークシェアが、COVID-19により急速に動き出しているように見えます。

そんな中、5月12日は「看護の日」、ナイチンゲール生誕201年を迎え、イギリス議会から始まった【看護で世界を健康にする】活動・ナーシングナウのラッピングバスが走ったり、表参道のけやき並木にフラッグが掲げられたりしています。それにちなんで、今月はナイチンゲールに思いを馳せてみました。

彼女がクリミア戦争で、兵士の死亡率を40%から5%に減少させたことは、公衆衛生の視点から有名ですが、病院建築上では、金属素材の便器置き場の配管(パイプ)に温水を流し、誰でもいつでも暖かい便器を使用できるようにしたこと、ナースコールを設置したこと等々、病院建築の礎を作った提案者でもあります。半世紀前、冷たいカネの便器は、湯を通し温めてから患者にあてるべしとの教育を受けたことを、懐かしく思い出します。昭和40年代に九州の小倉記念病院にこの配管が設置されたことを知った時は、大いに羨ましく思ったものでした。

また、彼女は、患者の食事内容の改善し、病気の早期回復を図ったことも有名です。90歳の生涯の中で、なぜ看護を選択し周囲はどうであったのか? もっと詳しく知りたいと考えていたところ、生誕200年を記念しナイチンゲール自身の著作および彼女にまつわる関連書籍が、シリーズで日本看護協会出版会から出されていました。

そのうちの一冊、手にしたのは“カサンドラ”。帯、“ヴィクトリア朝のジェンダー論、のんびり構えた女たちよ、目を覚ましなさい。”とあり、興味をそそられました。カサンドラとは、1840~50年に執筆されたナイチンゲール著作集『思索への示唆』に描かれた中心人物の女性の名前です。当時の上流・中流階級の女性たちに共通する苦悩を吐露し、社会習慣を痛烈に批判する作品ですが、ナイチンゲール自身を投影しているとも言われています。

社会経済や公衆衛生、建築学にも精通した彼女は、フェミニストであったのか?という疑問に、エレイン・ショウオルターは次のように答えています。『ナイチンゲールのフェミニズムにはいくつかの欠陥があったことを、まず認めておくべきであろう。彼女は、金銭・特権・人脈に頼り切って日々暮らしていた上流階級の人間であった。彼女は、平凡な女性の感情や価値観を拒絶するという点において知的に傲慢であった。母親と姉を軽蔑し、自分が看護の訓練を受けることに反対した二人を完全に許すことはなかった。ナイチンゲールは、家族からの窒息しそうな同調圧力に抵抗しなければならないことに深い傷を負っていた。クリミアからの凱旋帰国後、彼女は戦略的に病気を装った。そして、自身が60代になり母親の死後、初めて本来の自分の姿を現した。

ナイチンゲールは、家族的・社会的価値観の犠牲者のように思われるかもしれない。しかし彼女は、家庭生活の基本的な構造に疑問を投げかけ、母と娘の関係の誇張された美徳をあざけり、イギリス国教会の性差別体質をあえて批判することさえした』

200年前に生まれ、看護を希望しながらも家族の反対にあい、長らくうつ状態にあったことが、ヴィクトリア朝時代の女性の苦悩と共通するようだと描かれていますが、LGBTが認められない現代社会と、左程の変わりがあるように思えなかったのは、私だけでしょうか。

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