会長のマンスリーメッセージ

会長マンスリー
2021.03

東日本大震災から10年、私たちのミッションとは

東日本大震災から10年、一瞬のうちに奪われた生活、考えてもいなかった出来事に遭遇するという体験。恐ろしかったでしょう。怖かったでしょう。寒かったでしょう。辛かったでしょう。苦しかったでしょう。さみしかったでしょう。悔しかったでしょう。死にたくもなったでしょう。

『でも、でも、生きててくれて、ありがとう』

流れるニュース映像や新聞、雑誌から、未だ全町避難を強いられ、生まれ故郷や自宅に戻れない人々もあるといいます。残った人々は、慣れ親しんだ町並みや風景がなくなり、それが更地になっていく姿、高く積みあがる防潮堤の景色を見るのも辛く、しんどい思いをしていらっしゃることでしょう。再建したお家での生活。空も、空気も違う思いは、当事者にしかわからないのかもしれないけれど、伝えられている以上のことが起こっていた
ことだけは、想像がつきます。それに、乗り越えることが簡単ではないこと、そんな特別な時間を過したこと、思い出したくもないであろうことを、再び文章にして私たちに伝え、残してくださったことを、心より感謝します。

日本看護協会出版会の『看護』2021年3月臨時増刊号「総特集 東日本大震災、医療・看護の10年」を読みながら、この企画と執筆者にありがとう!と言いたくなりました。また再び、辛い時間を過ごさせたかもしれないけれど、この増刊号は、看護職として一生持ち続けたい一冊と言えるくらい価値があります。

看護職能団体として日本看護協会が行った復興支援や、政策提言・要望がよくわかりました。お陰で、岩手県、宮城県、福島県の保険医療機関の診療報酬の算定においては、入院基本料の施設基準として月平均夜勤時間数や看護配置などの要件緩和などが、特例として延長されたこと、自民党本部で、看護問題小委員会が開催され、復興支援の取り組み報告と被災地の課題に対する提言をしたこと等々、改めて認識することができました。

日本看護連盟もまた、石田昌宏幹事長(現・参議院議員)が、車で被災地に赴き、どこよりも早く物資の支援をしてくれたと、お礼の言葉や文書が届きましたし、連盟会員から未だに感謝の言葉を聞くことがあります。本当に職能団体の動きは、迅速で適切なのです。

しかし、それ以上に凄いことは、あの時の現地の状況や声を、改めて伝えてくれたことです。10の施設と訪問看護ステーションの報告です。

被害状況や復興までの取り組み、読みながら思わず涙し、心の中で手を合わせてしまったのは、老人保健施設における若草色のリボン活動のことでした。皆で同じものをつけると気持ちが近くなるようで、仕事が終わった後に施設に泊まり込んで作り、ボランティアさんや自衛隊の方たちにもお配りし、支援終了後に、パッチワークキルトにされ、今でも施設の玄関に飾ってあるとのこと。いつか必ず見に行きたいと思いました。

そして、文章の結びには、次世代を担う看護職へのメッセージがありました。私たちは、辛さを乗り越えて書いてくださった一言一言を、無駄にしてはなりません。特別な時間を過ごした方々のメッセージから、危機管理のたすきを繋ぐことが私たちのミッションになると感じています。

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