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日本訪問看護財団「訪問看護サミット2020」を開催
12月19日、日本訪問看護財団主催、訪問看護サミット2020「新型コロナウイルス感染症に訪問看護はどう向き合ったか・向き合うか」が開催されました。当初は、大阪で開催が予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、東京の事務局から、ライブ配信での開催となりました。約700名が、3時間あまり、5名の講師による講演とリレートークに参加しました。
開催にあたって、清水嘉与子理事長は「新型コロナウイルス感染症対応では、認定看護師がよい働きをし脚光を浴びたが、まだまだ数が足りない。ナースプラクティショナー制度の検討なども進んでいるが、能力の高い看護師がもっと増えていってほしい。そして地域にどんどん出ていってほしい。これが地域の健康を取り戻す大きな力になる」と挨拶しました。
冒頭に挨拶を述べる清水嘉与子理事長
各講演・リレートークの概要は以下の通りです。そのほか、「日本訪問財団の今後の取組」として、新型コロナウイルス感染症に関するWEBアンケートの報告を、佐藤美穂子常務理事が行いました。
当日の様子は、日本訪問看護財団のWEBサイトにてダイジェスト版がアーカイブ配信される予定です(2月頃予定)。
特別講演
- 「With コロナの施策の動向と訪問看護への期待」
迫井正深 厚生労働省医政局長
新型コロナウイルス感染症の国内発生動向や推移を、自殺統計なども含めながら紹介、今後の取り組みと予算等における対応について述べました。また、在宅領域における特定行為研修に関して、2019年に開始された、領域別パッケージ研修や手順書例集の作成に関する案内を行いました。
最後に訪問看護への期待として、「コロナ禍において、在宅・介護のニーズが高まっている。その中で、科学的エビデンスに基づき、感染対策とケアを両立できるのは看護師である。また困難な状況の中で、多職種と連携しながら、患者・利用者の立場に立って支援できるのも看護師である。看護師は、非常事態でも持続的継続的で安心なサービスを提供できるような体制を整え、事業を進めてほしい」と締めくくりました。
特別講演:迫井正深厚生労働省医政局長
リレートーク①
- 「在宅医療の最前線を担う医師からのメッセージ」
髙瀬義昌 医療法人社団至髙会たかせクリニック理事長
訪問診療の対象者のほとんどが、新型コロナウイルス感染症のハイリスク群です。しかし、受診を控えたり、介護サービスの利用を制限することによって、身体や認知機能の低下を招きます。「在宅医療の場では、感染防御策を講じると同時に、現実的にリスクが発生するかをしっかり評価する必要がある。また、コロナ禍では、いろんな制限や制約があり、終末期についてもコロナ感染を想定していかなければいけない場面があるが、日々変化する環境に一喜一憂せずに大方針を決めておくこと、感染症に対する差別や偏見を排除することが重要だ」と述べました。
リレートーク②
- 「利用者が感染、スタッフが濃厚接触判定されてどう対応したか」
稲葉典子 社会医療法人甲友会西宮協立訪問看護センター所長
本施設は、2020年の夏の第二波時に、利用者が感染、スタッフ1名が濃厚接触者となりました。講演では、第一波時の備えや、第二波時の所内レイアウト変更・他の利用者への情報提供などの対応の詳細が紹介されました。「関係機関や他の利用者へは、電話などで応対したが、対面とは違う難しさがあった。これは、ふだんから訪問看護の現場で問われている対人援助職としての相談支援の力量が問われていると実感した。また、利用者の陽性が判明するまでの行動には、担当看護師の直感的な判断があった。通常との違いがわかる看護師の貴重さと、訪問看護の力を実感した」と話しました。
リレートーク③
- 「ウイルスの次にやってくるもの」
弘川摩子 日本赤十字社医療事業推進本部副本部長兼看護部長
日本赤十字社の災害救援業務の柱として、「こころのケア」があげられます。同社では、新型コロナウイルス感染症感染拡大に際して、対応に従事している人のこころの健康にいち早く着目し、2020年3月10日にサポートガイドを発行しました(9月に第2版を発行)。そのほかにも、ストレスチェックリスト、一般向けガイドの作成・公開をしています。
感染症は「病気」が「不安」を呼び、「差別」がさらなる病気の拡散につながると警鐘を鳴らし、それに対する啓発活動を行っている現状を報告しました。
リレートーク④
- 「訪問看護ステーションにBCPを備えよう!」
山岸暁美 一般社団法人コミュニティヘルス研究機構機構長・理事長
BCP= Business Continuity Plan=業務継続計画は、リスク発生時に業務中断しないために、また中断した場合でも目標復旧時間内に再開できるよう、平時から備えておくことです。災害ごとの対応マニュアルではなく、どんなリスクにも対応するためのものです。
講演の中で、自施設だけでなく、近隣の事業所、保健所などと「地域包括BCP」を策定しておくことが重要だと強調されました。「平時にできないことは有事にできるわけがない。これでは利用者さんや住民の大切な命や健康、そして生活を守ることができない。病院では煩雑なBCPでも、訪問看護ステーションではシンプルな構造で導入しやすいので、ぜひ取り組んでほしい」と話しました。
リレートークの後の意見交換:(上左から)平原優美事務局次長、髙瀬義昌たかせクリニック理事長、(下左から)稲葉典子西宮協立訪問看護センター所長、弘川摩子日本赤十字社医療事業推進本部副本部長兼看護部長、山岸暁美コミュニティヘルス研究機構機構長・理事長
司会を務める菊地よしこ事業部課長
最後に日本訪問看護財団からの報告を行う佐藤美穂子常務理事
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