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2023.05

人口減少により保健医療専門職はどう変わるのか

 国立社会保障・人口問題研究所が4月26日、長期の人口動向を見通す「将来推計人口」を公表した。

出典:将来推計人口・世帯数 | 国立社会保障・人口問題研究所 (ipss.go.jp)

「将来推計人口」は直近(2020年)の国勢調査の数値をベースとして、50年間の日本に常住する総人口、男女別の人口、世代ごとの人口、出入国の人数などの数値を算出して、1年ごとにデータを示したものである。このデータによると2056年の日本の総人口は1億人割れとなり、生産年齢人口は総人口の52.8%、ほぼ2人に1人の割合まで減少する。

 そして、2070年には、総人口は8,700万人まで減り、65歳以上の高齢者が約4割を占めるという。このような状況下で、社会保障は現役世代への負担増や高齢者福祉の縮小が予測される。政府は、将来の人口減少や超高齢化に対し、子育てしやすい環境づくりや人生100年時代に元気な高齢者であることを求め、人工知能(AI)の力も借りて、社会全体の生産性を上げようとしてる。

 

 

 2040年には労働人口の大幅な不足が見込まれており、保健医療専門職や介護職にも影響が及ぶことが必至である。リクルートワークス研究所の試算によると、保健医療専門職で81万6千人、介護サービスでは58万人が不足すると予測されている。これを補うために、政府はDX(デジタルトランスフォメーション)への投資を推進しており、医療や看護の現場でもデータ(医療情報)やデジタル技術(IoT・AI等)の活用が進められている。 

 

 

 現在、看護の現場ではDXに向け様々な取り組みが始まっている。音声認識システムによる記録、通信機能付きバイタルサイン機器の活用、眠りSCAN、院内SNSの活用等、ICT活用による看護業務改善が進められている。DXが進展してもAIが看護職に取って代わることはあり得ない。看護師が専門職として実施すべき業務、ICT・AIに委ねるべき業務を選別し、看護師が対象者のそばにいることができる時間を増やすこと、それが対象者と看護師のつながりを生むことになり、専門職として誇りを醸成することに繋がると考える。安全で安心できる医療・看護を提供するために、ICT・AI等をいかに活用すべきかを考え、今後も医療DXが進められていくことを願う。

 

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