会長のマンスリーメッセージ

会長マンスリー
2021.08

終戦体験とコロナ禍の体験を語り継ぐために

【終戦体験】

 自分が体験していないことを、人はどうしたら実感できるのか?

 そして、後世にその事実を客観的にどう語り、どう伝えうるのか?

 76年間、8月15日が来るたびに日本人は、この問いを突き付けられてきた。重い歴史を見つめることは苦しい。しかし、知ることで扉は開く。特に戦後生まれの自分にとって、かつては祖父母や両親や近所の人から伝え聞いたり、書物で読んだり、映像で見たりしてきた。

 今年は、非常事態宣言下でステイホームをしていたせいか、映像で見る機会が以前よりずっと長かった。沖縄のひめゆり部隊、日本で一番長い日、終戦を迎えるにあたり日本のトップが、また部隊のリーダーがどのように考え、立ち振舞ったか、全体主義というその時代の一方的価値観に、歯向かうことのできない息苦しさと閉塞感を、また、人間として生きることの困難さをつくづくと感じさせられた。こういうことを思い出させ、考えさせるために映像が創られるのかもしれない。

 その時代に生きている自分であったらと当事者意識に立っても、回答は、簡単に出そうにない。それよりも、今の時代がいかに自由で、自己の価値観を発言したり書いたり、行動ができる当たり前が保障されていることかを、ひたすら喜びたい。

 いかに、一人ひとりの人間が尊重され法律で守られているか、今を生きるありがたさを感じる。地球という星に生まれ、あまたある国の中の日本という国に生活する幸せを想う。ニュースで、生まれた国から脱出しなければならない国民の姿を見るにつけ、成熟した民主主義国家で生活できる現在は、私たちの先祖の尊い命の犠牲の上に成り立つ営みであることを認識し、感謝するとともに、この平和を維持し継続して歩んでいく責任を国民として感ぜずにはいられない。

【コロナ禍の決断】

 未だかつて体験したことのなかったCOVID-19の感染。これが始まりまもなく2年が経過する。訳の分からないウイルスの存在から、ウイルスの性質や感染経路と対処方法が体験的に考え出され分析され、ワクチン開発にも漕ぎつけた。人類の英知の結晶で、凄いことであったと思う。世界が一つになり対処する状況を私たちは、逐一体験してきた。ワクチン接種と言う恩恵にも与っている。それでも、変異株の存在は怖いし、自分が感染源にならないように3密を守る生活は継続しようと思う。

 一方、毎日夕方になると放送される感染者数、その数に一喜一憂しながら、医療現場で働く看護職を思う。医療崩壊が目の前に迫る中で、黙々と看護の仕事に立ち向かう姿が目に浮かぶ。何とかしたい。自分にできることは、何か?自問して出た答えは、ワクチン接種を推進することである。集団免疫獲得を目指すことが、最終的に、臨床で踏ん張って、頑張ってくれている看護職への支えになるのではないかと考える。持病があって打てない人は仕方がないが、打てるのに打たずにいる人、迷っている人が周囲に居たら話し合ってほしい。誤解を解いて欲しい。正しい知識を提供してほしいと思う。今、私たちのできることを、看護専門職として力を発揮していきたいと強く思う。

 少し前に現場の声が届いた。大学病院にワクチン接種をしていない若者が運ばれて来たが、急激な悪化で、もがき苦しがる状態をケアしなければならない看護職が、その姿を受け止めるがゆえに、強いストレスを感じていると。臨床の看護職が、少しでも楽に仕事ができるように、私たちは、ワクチン接種の普及を地域に呼びかけてゆこう。

【経験と体験の違い】

 コトバンクによれば「経験とは、個々人に直接的に与えられる、知的な諸操作が加えられる以前の非反省的な意識内容をさす」とある。経験が外界の知的認識という客観的な意味をもつので、実際に見たり、聞いたり、行ったりすることで得られた知識や技能は「経験を積む」「経験が浅い」「色々な部署を経験する」といった感覚や知覚によって直接与えられるものである。

 一方「体験」はより主観的、個人的な色彩が濃い。すなわち、知性による秩序だった考えや普遍化を経ていない点で客観性を欠き、具体的かつ1回的なできごととして情意的な内容までも含んでいる。しかし、日常的な事柄については、「経験(体験)してみてわかる」「始めての経験(体験)」というように相通じて用いられる。「経験を活かす」「人生経験」という風に、経験の方が使われる範囲が広く、体験は、その人の行為や実地での見聞に限定し「体験入学」「戦争体験」のように、それだけ印象の強い事柄について用いて、広い意味で経験の中に含まれると解釈できる。

 今、世界中の人類が経験していることを、後世に語り伝え、新たな生活の仕方にも慣れて、平和で豊かに持続可能性のある社会を創りあげてゆこう。

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