会長のマンスリーメッセージ
ハワイ州での研修に参加して
日本NP教育大学院教育協議会(以下、NP協議会)が行っている「NP(ナースプラクティショナー)ハワイ研修」で、ハワイに行って参りました。NP協議会では、2012年からNPの先進国であるアメリカにおいてNP研修を行っており、2014年からはハワイ州で研修を継続しております。研修先をハワイ州に変更した理由は、アメリカ50州の中でNPの裁量権の範囲が最も広い州(検査のオーダー、薬剤処方を含めたほぼすべてのプライマリケアを自律して行うことができる)とされているからです。距離的にも日本と近く、時差も短いため、到着した当日から研修を組むことができ研修日程も短くでき、研修費用も安くて済むというメリットもあります。
今回のハワイ研修を通して気づいたことをいくつか紹介します。
ハワイ州では看護師は就職難の時代を迎えており、NPとしてのキャリアアップのコースを選択し、老健施設などで看護アシスタントとして就労しているとのことです。一方、医師の地域・診療科偏在、病院運営の効率化などを反映し、ヘルスケアプロバイダー(医師、NPおよびPAで保険請求ができる)としてのNPの需要はハワイ州も含めアメリカ全州で高いとのことです(現在、約25万人のNPが活動)。
チーム医療が医療現場でしっかり根付いているということを見学したほとんどの施設で実感しました。医療に関連する職種も、機能別に分割されており(ほとんどの職種がCertified認定されている)、自分たちの業務範囲の中で自律的に活動し、各職種がお互いをパートナーと認識し、患者さんのために連携・協働している実態を見ることができました。看護に関係する職種としては、RN(正看護師)、APRN(Advanced Practical Registered Nurse:NP、CNS、助産師、麻酔看護師)、医療アシスタント、看護アシスタントなどがあります。看護アシスタントは、主に病棟や老健施設などで看護師の業務のアシストしており、医療アシスタントは、主に外来やクリニックにおいて医師、NPの診療のアシストをしており、短期間の養成教育を終了後、認定証が交付されます。看護アシスタントは、清拭、環境整備、食事、トイレ介助などの療養上の世話だけではなくバイタルサインのチェック等も行い、医療アシスタントは受付業務から、簡単な医療業務(静注を除く注射、採血、バイタルサインのチェック等)を行なっております。NP、看護アシスタント、医療アシスタントなどが活躍し医師とNPや看護師とアシスタント間のタスクシフティングを行うことにより、業務の効率化、経費削減に結びついています。
看護師が、自分たちの生活スタイルに合わせて日勤看護師、夜勤看護師、パートタイム看護師、オンコール看護師と働く形態が分かれていることも今回の研修で初めて知り、日本の看護師の働き方改革の参考になるかもしれないと思いました。
オバマケアにより現状ではすべての国民が保険(国の保険〔メディエイド、メディケア〕、民間の保険、雇用主が加入している保険)に加入することが義務づけられておりますが(来年から義務でなくなる)、「医療もビジネスである」と捉えられているアメリカでは患者が加入している保険の種類によって提供する/提供される医療が大きく影響されているという印象を受けました。
生産人口の減少、限られた医療資源(人材、財務)の下で、日本の医療保険、介護保険制度を堅持していくためには、効率的に医療・ケアを提供できる仕組み作りが必要です。人種構成(ハワイの場合、アジア系の人々が50%以上を占めている)、医療保険制度などの違いを認識しつつ、日本でもNP、医療アシスタント、看護アシスタントなどが制度的に活躍する仕組み作りに取り組んでいく必要がある、との思いが研修に参加するたびごとに強くなっています。
会長のマンスリー
メッセージ