看護連盟NEWS
自由民主党看護問題小委員会 開催
2月14日、自由民主党本部において、今年度2回目の看護問題小委員会が開催されました。今回は、9月の小委員会で説明説明された令和5年度の看護関係予算の、その後の推移について、厚生労働省、文部科学省から報告がありました。また、その他の議題として、日本看護連盟・日本看護協会から「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」の改定の要望が出されました。
進行は、石田まさひろ副委員長兼事務局長(参議院議員)が務めました。
議事に先立ち、田畑裕明厚生労働部会長(衆議院議員)、田村憲久委員長(衆議院議員)が次のように挨拶しました。
田畑厚生労働部会長の挨拶
各看護関係団体の皆様には、いろいろな面でご支援をいただき、また皆様のお仲間が看護の現場で、また教育機関でご奮闘されていること、心から敬意を表します。
マスクの着脱の件や、コロナの感染症法の引き下げについても、ご承知のとおりですが、医療現場の皆様は、いろいろな思いで受けとめられているでしょうし、いまも現場においては患者のために汗をかかれている。今日の中でも、ご発言やご意見があれば、お聞かせいただきたい。
今日は厚労省・文科省からの予算の説明でありますが、何よりも実りのある予算を早期に成立するために、我々もしっかり取り組むことをお誓い申しあげます。
田村委員長の挨拶
看護協会からは福井会長、そして看護連盟からは高原会長、ご就任おめでとうございます。
コロナ禍で、やはり看護の現場は大変で、もう3年になり、かなり疲弊されている。コロナの波が来るたびに辞めていかれる看護職がいる。また、(感染症)5類という話がいよいよ迫ってきました。しかし、疾病自体の性質が変わるわけではなく、やはり医療現場はまだ大変な状況が続くと思います。そういう意味で、看護の方々をどのようケアしていくのかが重要です。そういうものも今回の予算には含まれているだろうと思います。
一方で、そのあとご議論されると思いますが「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」というものがある。まだ「看護婦」という言葉を使っている。平成4年に作られたもので、そのころの看護師等の数、状況が書いてあって、これからこうしなければならないということが書いてある。私が国会議員になったのは平成8年ですから、私が国会議員になる前から変わっていない。これに対して、今日(改定の)ご要望があると思います。しっかり小委員会で検討させていただきたい。
<予算関連の質疑・意見交換>
田畑厚労部会長、田村委員長のあいさつのあと、厚生労働省、文部科学省の担当者から、令和5年度看護関係予算の説明がありました。予算の概要については別の機会にご紹介します。予算の説明の後、出席した国会議員から意見・質問がありました。その概要を紹介します。(◉が国会議員の発言)
◉先週末(2月12日)に看護師国家試験が実施された。前回の小委員会で、試験会場の問題をお願いした。再考いただき、福岡の受験生は、熊本や長崎ではなく、地元の試験会場で受験でき、全国的にも試験会場の問題が改善されたと聞いている。感謝申し上げる。とくに大学の試験会場も確保できたそうで、文科省のご協力もあったのだろうと思う。感謝を申し上げたい。まだまだ、試験会場の問題、あるいは再試験などの要望もあるので、きちんと試験が実施され、いろいろな要望に対応できるように、引き続き関係者にはご検討いただきたい。
○厚労省看護課の回答
看護師国家試験について、9月の小委員会で質問いただいた。今年度は2月12日に試験を無事終え、欠席者は例年通りの状況だった。再試験等については、他の試験と日程が重なり会場の確保も難しいが、引き続き検討していきたい。
○日本看護協会の福井会長の意見
看護師国家試験に関しては、かつては大雪のときに追試験が行われた。コロナ禍では、これからどういう感染状況が発生するのか、また、交通事情がどうなるのか。全国各地の会場で試験が実施されるが、移動する看護学生の負担等を考えると、そろそろコンピュータ試験をにらんだ動き方をしていくことが必要ではないか。諸外国ではコンピュータ試験の実績もあり、予算の確保が一番大切だと思うが、ぜひ着手していただきたい。
◉先ほど田村委員長からも話があったが、コロナ禍の中で、看護に限らず、いろいろな職種で人材が不足している。これから、どうすれば人材を確保できるのか。看護現場で、どういうことが起こっていて、どういう不安や課題があるのか、いろいろな機会を捉えて是非教えていただき、それに向けて対応していきたい。人材養成に関するいろいろな予算の説明もあったが、これらがどう機能しているか検証し、実効ある予算と政策の推進をぜひお願いしたい。
○福井会長の意見
人材不足に関しては、直近の実態調査によると、看護職の離職がじわじわと上がってきている。コロナ禍の3年間、看護職は精いっぱい頑張ってきたが、ここに来て疲弊が出ている。今までは一般病棟の患者のケアとコロナの患者のケアとがある程度分かれていたが、今はどうしてもまぜこぜにならざるを得ない状況も出てた。5類になると、それは一層加速されていくので、そういう中で看護職はこれまで以上に気をつけなければいけない。この3年間、卒業してきた看護師たちは、臨地実習が十分にできないまま臨床に入ってきたので、そこの負担感が非常に大きい。また現場の看護職が指導するにも、余裕があって指導できるわけではない。
看護職の処遇改善は、看護職すべてが対象ではなかったので、コロナで誰もがみんな同じように頑張ってきが、対応してもらえる病院とそうでない病院があったことが、看護職にとっては理解しがたいところだった。ぜひ次の改定のときには、すべての看護職にお願いしたい。
◉文科省から説明があった医療的ケア児の件で、看護師さんの取り組みに関して予算の増額が示された(26億円から33億円)。この予算は、何人くらいの医療的ケア児を想定し、看護師の増強するのか教えてほしい。また、高校生は対象となるのか。
○文科省の回答
単価では、時給1,800円である。ただ、上限は設けていない。例えば東京都は送迎にかかる時給は、倍の支払いをしている。国は、設置者が払うお金が幾らであろうと、その3分の1を負担する。設置者の支払う額によるが、ちょうど支払えるくらいの予算と考えている。高校生も対象になる。
◉地元の重度心身障害児を扱っている医療関係者からの話では、これまで通学や通所、場合によっては入所されていた子どもが、地域のインフラが整ってきて、在宅だったり、身近なところでケアを受けられる体制になってきたという。明らかに医療的ケア児支援法によって流れが変わってきたのだと思う。また、コロナ禍で在宅でのケアのニーズも高まっていると聞いた。実態把握をしていただき、また在宅が中心になると、いろいろ改めなければいけないところも出てくるのではないかなと思う。
<「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」の改定の要望>
予算に関する質疑の後、日本看護連盟と日本看護協会は「看護婦等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」の改定を要望しました。
福井会長は「看護職員の確保は大きな課題だが、現在は、看護職員の量的確保に加えて、看護職員一人ひとりの資質向上と就業の継続を図る施策に一層注力しなければならないと考えている。そこで、看護等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針の改定が必要だ。この指針は、1992(平成4)年に策定されてから既に30年以上が経過しており、名称中に看護婦の文字が残っていることからも明らかなように、これまで一度も改定されていない」と述べました。この30年間で、看護の現場および看護を取り巻く状況は大きく変化しており、その状況に合致した指針の改定について、福井会長は、次の観点から要望しました。
1.わが国の将来の社会的状況を踏まえた量・質量面における確保方針の策定
2.地域・領域の偏在への対応
3.看護基礎教育および個々の看護職員の自立・自律に基づく生涯学習の充実
4.ライフステージに応じた多様な働き方の推進
5.ナースセンターを活用したキャリア継続支援体制の強化
6.安心・安全な労働環境の実現
7.緊急時(大規模災害や新興感染症等のパンデミック発生時)における看護職員の確保
◉友納理緒参議院議員の発言
この基本指針は「看護師等の人材確保の促進に関する法律」の第3条に、基本指針を定めなければならないとなっているところで規定されている。今、福井会長が述べられたように、働き方や教育状況も変化してきており、時代の要請に応じて変えていく必要があると考えている。では、この指針は改定されることが想定されているのか。中身を見ていくと、例えば、就業の動向に関する事項では、この平成4年にできたときの事情が含まれている。これは時代とともに変わっていくものだから、改定されていくことが想定されているものと考える。また、指針は大臣が定めるもの(大臣告示)で、法律を変える必要はない。このような面からも改定すべきと考える。
◉田村委員長の意見
どう見ても実態から乖離している。(この指針が策定された時と)全然違う状況になっている。見直すことが前提でなかったからなのか、どういう経緯で改定せずに残っているのか。
◎厚労省の姿勢が問われるようなことなので、改定されたほうがいいだろう。
◉石田副委員長のまとめ
今その中身について議論する話ではないが、いただいた要望「指針の改定」は大臣告示でもあるので、厚生労働省、その他関係する省庁で検討して見直すことを、看護問題小委員会としてはしっかり要請していきたい。
○髙原会長の挨拶
今回の議事の終了後、髙原静子日本看護連盟会長が次のように挨拶しました。
2月1日をもちまして、日本看護連盟会長に就任いたしました髙原静子と申します。委員の皆様には昨年来、看護職の処遇に関して、いろんな対応をしていただき、ありがとうございます。しかしながら、先ほど、福井会長からもお話があったとおり、看護師の処遇に関してはいろいろ問題があります。また、現場では3年の長きにわたるコロナ対応をしておりまして、かなり疲弊をしております。いままで離職率の低かった国公立系や大学病院でも、15%を超える離職率になっているのが現状です。
今後とも看護職の処遇、それから働く環境の改善にお力添えをいただきますよう、よろしくお願いいたします。
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