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2021.09.09

自民党看護問題小委員会が開催:令和4年度看護関係予算の概算要求について

 8月31日、自民党本部において、看護問題小委員会が開催され、石田まさひろ副委員長(参議院議員)が司会を務めました。

 福岡資麿委員長(厚生労働部会長、参議院議員)の挨拶の後、厚生労働省と文部科学省の担当者が、令和4年度の看護関係予算の概算要求について説明しました。

司会をする石田まさひろ副委員長(参議院議員)

挨拶する福岡資麿委員長(参議院議員)

左から、あべ俊子副委員長(衆議院議員)、大島敏子日本看護連盟会長(手前)、たかがい恵美子副委員長(参議院議員)、石田まさひろ副委員長

厚労省および文科省から看護関係予算の概算要求について説明

 つづいて、看護関係団体からの要望について、概要の説明がありました。この説明に先立ち、日本看護連盟の大島敏子会長が挨拶しました。

 大島会長は、自民党看護問題対策議員連盟が作成した「看護職への応援メッセージ」に感謝を述べた後、コロナ禍にあって看護の現場は大変ストレスフルな状況が続いており、限界に近い状態にあると訴えました。現場が何を求めているか聞いて回っているが「ちょっと品のない言葉で申し訳ございませんが、感謝を皆様方が伝えてくださるとするならば『気持ちは現金で』」と締めくくりました。

挨拶する大島敏子日本看護連盟会長

 大島会長の挨拶の後、日本看護協会の福井トシ子会長が、日本看護協会・看護連盟の要望を説明。このあと、日本看護連盟の和田幸恵幹事長が17団体の要望の概要を説明しました。また、追加要望として日本助産師会の島田真理恵会長が、妊産婦の新型コロナウイルス感染も拡大している状況から、専用窓口の設置や助産師の活用を訴えました。

要望書の説明をする日本看護協会の福井トシ子会長

日本看護連盟の和田幸恵幹事長が各看護関係団体の要望について説明

[各看護関係団体の要望書]

各項目をクリックすると要望書のPDFをご覧になれます

2021年要望書一覧

1_日看連・日看協

2.日本訪問看護財団

3_全国訪問看護事業協会

4_日本助産師会 要望書

4.2_追加資料・日本助産師会

5_全国助産師教育協議会

6_日本看護系大学協議会

6.2_日本看護系大学協議会−(添付資料)

7_国立大学病院看護部長会議

8_日本精神科看護協会

9_全国保健師教育機関協議会

10_日本産業保健師会

11_日本産業衛生学会産業看護部会

12_看保連

13_日本男性看護師會要望書

14_認定看護管理者会

15_全国保育園保健師看護師連絡会

16_日本看護職副院長連絡協議会

17_日本看護学校協議会

18_日本私立看護系大学協会要望書

[出席国会議委員の発言・質問]

 出席国会議員からの意見・質問について、以下にその概要を紹介いたします。○が国会議員の発言です。

○コロナの病棟での看護師の仕事は非常に大変だ。看護師のモチベーションが一番上がるのは、やはり手当だ。訪問看護に今回診療報酬の加算がついたが、まだ足りないので、見直していただきたい。また、タスク・シフト、タスク・チェンジの流れの中で、特定行為ができる看護師の数を増やしてほしい。介護施設では、介護福祉士に加算がつくが、病院の看護助手の評価が低い。高齢者の患者が増えていくことに対応するため、看護助手の評価を上げていただきたい。

[厚労省側の回答]手当については、看護職員の夜間配置加算や看護補助加算等の評価の引き上げを、令和2年度改定で行った。今後も、少しずつ充実させていきたい。特定行為研修修了看護師については、令和4年度の概算要求で、指定研修機関への支援を盛り込んだ。効果的に養成者を増やすための取り組みを指定研修機関に検討いただいている。訪問看護の加算は、引き続き状況も見ながら検討したい。

○看護関係概算要求の説明では、全体の医療確保の説明がなく、看護に関する資料だけだった。看護が今必要とする情報を提供する全体的な資料を作っていただきたい。アンケートでは、現場が慰労金を受け取った時期は12月がピークだったが、補正予算は5月か6月に通した。各県で相当差があったのだろう。厚生労働省は、都道府県に要請や通達するだけでなく「こういう日程でやってほしい」と強く指導していただきたい。

○このコロナを経験して、制度の改正は必要不可欠だと思っている。1つは、ナース・プラクティショナーをはじめ、看護の職務領域を、責任と権限の両方セットで拡大すべきこと。地域医療で緊急時に対応するには、権限を拡大しないと、人不足でパンクしてしまう。2つ目は、潜在看護師の掘り起こし。単なる掘り起こしではなく、全体のスキルを上げていく支援が必要だ。

[厚労省側の回答]タスク・シフトを推進するための検討会を令和2年度に開催した。このなかでは、ナース・プラクティショナーの創設が必要という意見と、特定行為研修修了者をさらに活用して対応すべき、と両論あった。当面は、特定行為研修を推進していく。潜在看護職については、各都道府県のナースセンターなどで研修を行っている。今後も継続できるよう、令和4年度にも予算を確保する。

○今回のコロナ禍で、例えばワクチン接種や宿泊療養所などで仕事をすると収入が増え、扶養から外れるのではと心配で躊躇しているという話を聞いたが。

[厚労省側の回答]コロナ・ワクチン接種に従事して収入が増えた場合も、特例的な収入であり、被扶養者から外れることはないと連絡している。

○コロナ禍はこれからもしばらく続く。いずれコロナは2類感染症から外れることを見据え、地域医療で呼吸管理などができる看護職を大量に育てるプログラムへの予算を取るべきだ。基本的なことを看護職は学んでいるので、新しい知識・技術などを集中的に学べば、多くの看護職は対応できる。

○ロンドン・オリンピックの後に、ナーシングナウの運動がおこった。東京オリンピックを開催したこの秋、世界栄養士首脳会議(栄養士サミット)が行われるが、看護についても考えるきっかけがあったらいいのだが。また、タリバン勢力が支配するアフガニスタンでも、女性の職業教育を日本で受けたいというメッセージが出ている。医療従事者の教育も必要だろう。

[厚労省側の回答]当初はオリンピックが2020年に実施されるので、令和2年度予算でナーシングナウ・キャンペーンの事業費を確保し、日本看護協会でイベントなどを行なっていただいた。

[日本看護協会・福井会長の発言]

ナーシングナウ・キャンペーンでは、30団体と後援団体13団体で2年間のキャンペーンを行ない、一定の成果を見た。世界をつなぐ会合を持ち、約5000人の参加を得て日本宣言を行なった。なお、コロナ禍に関して、現場の看護職から、8月24日、日本看護協会に要望のメールをいただいたので、披露したい。

「うちの病院はコロナ患者を受け入れています。私は、自分の病院でコロナ患者の対応にあたり、状況によってはもっと大きな病院にコロナ派遣に行かされたりしてきました。

 しかし、病院にコロナ診療や病床補償に県からお金が出ても、看護をしている看護師はこのお金をもらっていません。一度、看護協会の社労士さんに調べてもらいましたが、病院の問題なので仕方ないと言われました。一応、うちは公立病院です。病院は、私たちには1/10の賃金しか払わず、この収益で病院の赤字補填をしています。

 コロナ患者に関われば、自分の感染リスクのストレスもありますが、感染を恐れ自宅に帰れません。家族にも負担がかかります。子どももいるため不安にさせていることも精神的に負担です。なのに、賃金もないなんて、こんなことやっていられません。医師はリモート診療をして、患者に関わるのは看護師だけです。そして、医師には手当が多い。

 それで無理やり県からは病床増やせと言われ、コロナ受け入れていない病棟も、入退院や手術も減らしていないので、大変な忙しさで家に夜10時まで帰れず仕事をしています。補償がなければやりません。やりたくない。看護協会は何しているのでしょうか。看護師を辞めさせたいのでしょうか。看護師の権利を主張してはくれないのですか。

 もっと世の中に声を上げていいと思います。病院に所属せず、派遣や臨時でコロナへ行かれた方は多額のお金を受け取っておられるようなので、このままでは病院を看護師が辞めて、派遣でいいやとなりそうです。どんどん潜在看護師が増えてしまいます。もう少し、看護師を守る対応をしていただきたいです。よろしくお願いします」

○介護の場合は処遇改善予算があり、介護士に直接お金がいく。そういう仕組みを作れば、直接看護職にお金が渡り、モチベーション・アップの一法となるだろう。

[日本訪問看護財団・佐藤美穂子常務理事の発言]

コロナ禍で自宅療養者が増えるなか、訪問看護がどのように自宅療養者を健康観察に行くか、準備を進めている。訪問看護ステーションが拠点となり、安心して通常の業務を行いながら、自宅療養者の健康観察そして必要であれば医療につなげられるよう、手当てを厚くしていただきたい。また、医療保険制度と介護保険制度の間の陥凹で、ボランティアで訪問看護を行う場合がある。介護から医療に移る時、指示書がないまま、1日・2日とボランティアで活動することがある。保険制度と医療保険制度の切れ目のないつなぎをご検討いただきたい。

[厚労省側の回答]可能な限りいろいろな通知や運用は用意しているが、ぜひ忌憚のないご指摘をいただきたい。可能な限り対応していきたい。

 最後に、あべ俊子副委員長(衆議院議員)が次のように発言しました。

あべ俊子副委員長(衆議院議員)

 医師の処方に関しては、(いまの日本訪問看護財団の佐藤常務理事の発言のような時も含め)これから先、柔軟な指示のあり方を制度として作っていくべきではないか。在宅を進めていくドクターが阻害因子になるのは、医師会にとってもまずいことだと思う。ぜひお願いしたい。

 地方では感染症専門の看護体制をつくるのは無理がある。ならば、遠隔の看護をしっかりと位置づけるべきだ。対面の訪問看護とは別に、遠隔看護を一本立てるということは、地方の医療を救うことになる。

 また、先ほど(日本看護協会の)福井会長が紹介されたように、ナースが疲弊している。ワクチンはある、コロナの受け入れをしたいが、ナースが仕事を辞めると言って脅すから受け入れないという話があるが、それは違う。ナースはいっぱいいっぱいでやっていて、病院の利益は上がっているのに、ナースに手当は出ていない。こういう課題に対して、補正予算が出るのであれば、第一線でやっている本当のエッセンシャルワーカーに予算をつけるべきだ。

 この国の医療を第一線で守っているのは誰か、ということをしっかりと精査していただきたい。

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