会長のマンスリーメッセージ

会長マンスリー
2018.01

健康寿命の延伸に向けて

 2016年の日本人の平均寿命(女性:87.14歳、男性:80.98歳)が、昨年末に発表されました。特殊合計出生率(2016年 1.44)は、徐々に上向いているとはいえ、国が目標としている2025年の希望出生率1.8にはほど遠い状況で、超高齢社会への対応が不可欠です。「一億総活躍社会」などが声高々にいわれておりますが「健やかに天寿を全うする」「最期まで自立した生活を送る」こと、すなわち「健康寿命」を平均寿命に近づけることが、個人にとっても、社会にとっても望むところであり、課題でもあります。日本の健康寿命(平成26年度版厚生労働白書)は、女性75.5歳、男性70.6歳で、男女ともに約10年間は、他者の支援が必要ということになります。

 健康寿命の延伸のためには、一人ひとりの努力(自助、互助)が大切であることはもちろんですが、昨年末の医療団体の会で、日本歯科医師会会長の「健康寿命延伸に向けての歯科医師界の取組」のお話を伺い、看護界として組織的に「何ができるか」「何をしていかなければならないか」具体的な取組(共助、公助)を検討・実行していく必要性を改めて強く認識しました。

 健康寿命の延伸のためには「一次予防」「二次予防」を徹底することであり、中心的な役割を果たしてきた保健師のみなさんが実力を発揮し、活動しやすい仕組みを整えていくことが、組織として早急に取り組んでいく課題ではないでしょうか。早期発見・早期治療(二次予防)のためには「健康診断」が重要です。日本は、母子保健法、学校保健安全法、労働安全衛生法、健康増進法(40歳以上を対象にした特定健診)等で、定期的な「健康診断」(以下、健診)が法制化されている素晴らしい国です。現在、健診が制度化されていないのは、40歳未満の未就労者(専業主婦など)のみです。市町村が行う「がん検診」(任意で、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの検診が実施されている)も早期発見・早期治療のための重要な健診であるにも拘らず、受診率が50%に達していないことが大きな課題です。健診(健康診査と保健指導から成る)において保健師は重要な役割を果たしてきたにも拘らず、保健師が関わることができるのは「保健指導」(特定検診では、療養中の受診者の保健指導は、保健師ではなく医師が行うことになっている)のみです。健診における「健康診査」と「保健指導」が実質的に一貫して行われることが、効果的・効率的な健診であると考えております。保健師が「健康診査」も実施できるようになることにより「特定健診」「がん検診」の受診率をあげることにも繋がると考えております。保健師の大学院教育も進められております。健康寿命の延伸に向けて、保健師がさらに実力を発揮し活躍できるように「保健師の役割拡大」を進めていくことが組織としての喫緊の課題ではないでしょうか。

 年賀状を手にしながら、自分、社会のためにも「健康寿命」の延伸の重要性を身につまされております。

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