会長のマンスリーメッセージ

会長マンスリー
2017.07

「骨太方針2017」と看護職

「骨太方針2017」(経済財政運営と改革の基本方針2017―人材への投資を通じた生産性の向上―)が、経済財政諮問会議の答申を経て、さる6月9日に閣議決定されております。

「骨太方針」は、自分たちとあまり関係ないと思っておられる会員のみなさまが多いのではないでしょうか。私たち看護職は、経済、財政等に関しては関心が低く疎いのが実情ではないかと思いますが、看護が抱えるさまざまな課題を解決し、看護政策の実現を目指した要望を今後も継続していくためには、看護職も経済、財政にも関心を持ち、「骨太方針」にも注目していく必要があると考えております。給与、夜勤手当を増額して欲しいなどの看護職にとって切実な問題を解決していくためには、財源がどのように確保されるのかについても思いを馳せることが必要です。「骨太方針」は、将来の世代につけを回さないためには、プライマリーバランス(国、地方の財政収支のバランス)を取りながら、国の経済財政政策を進めていく上での基本方針を示すものであり、その中には、国民のみなさまにとって最も身近な課題であり、看護職が専門職として係っていく社会保障に関する基本方針も含まれております。

 「骨太の方針」は、小泉政権下で「聖域なき構造改革」を着実に実施していくために経済財政諮問会議において経済財政政策に関する基本方針を決議したことに端を発し(2001年)、毎年、経済財政諮問会議の答申に基づき、閣議議決定されるもので、各省庁からの予算要求はこの基本方針に沿って行われることになりますので、看護職にとっても重要なものであることを認識する必要があります。

「骨太2017年」における社会保障政策に関しては、2025 年度をターゲットとして、国民のQOLを向上させるとともに、国民皆保険・皆年金を維持し、これを次世代に引き渡すことを基本方針としてあげ、医療費・介護費については高齢化を上回る伸びを抑制しつつ(医療費の年当たりの高齢化に伴う自然増は、5000億円以内に抑制することが求められている)、国民のニーズに適合した効果的なサービスを効率的に提供するために、「経済・財政再生計画」(平成27年12月)に上げられた44の改革項目について、改革工程表に沿って着実に改革を実行 していくこととされており、とくに目新しいものはないと思います。

「骨太方針2017」の中の「看護」に特定した具体的な記述としては、「…全ての国民が必要な医療を受けられるよう、医師等の負担を軽減しつつ医療の質を確保するため、看護師の行う特定行為の範囲の拡大などタスクシフティング(業務を移管すること)、タスクシェアリング(業務を共同化すること)を推進する…」があるのみです。

2025年問題を解決するために、国は「治す医療」から「予防し・治し・支える」医療への転換を図るさまざまな方策(地域医療構想ビジョン、地域包括ケアシステムの構築など)を打ち出し、推進しております。「支える」医療は、各領域の専門職のチームで実行していかねければならないことは自明のことです。そこで、「骨太方針」の中に医師以外の医療スタッフに関連する具体的事項をもう少し盛り込んでいただければと思っています。骨太方針に記載されているかどうかは看護政策の実現にも大きく関係すると思っております。このためには、私たち自身が、看護職、とくに健康増進に大きく係る保健師、少子化対策に係っている助産師の役割の重要性、活動の実績などを厚労関係以外の国会議員の先生方にもっとアピールしていくことが大事であることを、「骨太方針2017」に目を通しながら痛感しているところです。

話は逸れますが、社会保障に関しては、「社会保障と税一体改革」として検討され、消費税率の引き上げに伴う増収分は、全て「社会保障」の財源として使われることが前提であったことを私たち医療関係者は再認識し、2019年10月に予定されている消費税率10%への引き上げの行方を見守っていきたいと思います。

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