会長のマンスリーメッセージ

会長マンスリー
2017.06

自律した看護職、自律した組織

 看護教育の領域に係るようになり、早くも20年が経ちました。あっという間に20年の時が駆け抜けていったという印象です。

 看護教育に携わるにあたり「自律した」看護師の育成を目標としてかかげ、努力してきたつもりです。

 患者さんや、実習施設のみなさまなど多くの人々の支援・協力をいただきながら、着実に「自律した」看護師が、育っていることを実感できうれしく思います。

 当たり前のように使っていた言葉ですが「自律した看護師ってなに」と、質問されることが時々ありますので、ここで、再考し、さらなる自律を目差した教育に係っていきたいと思います。

 「自律した」看護師については、さまざまなご意見があるかと思いますが、私は、一言でいうと、「自分の行った行為に対して責任がとれる看護師」であると考えております。「特定行為に係る看護師の研修制度」を法制化する過程でも「看護師が責任をとれるのか」とのご意見が聞こえてきました。手順書によって行われる特定行為に限らず、医師の指示で行う診療の補助行為であっても、自らの行為に責任をとることは、医療に係る専門職として当然のことです。

 看護師の役割は、患者さんの「症状マネジメント」であると考えております。看護師自らの判断で行う療養上の世話、医師の指示で行う診療の補助行為を通して、タイムリーに症状マネジメントを行っていくためには、患者さんの状態を正確にアセスメントし、その結果をもとに、個々の患者さんごとの症状マネジメントのためのケアを考え、判断し、計画し、実行していかなければなりません。組織運営のツールに使われているPDCA(Plan→ Do→ Check→ Act)サイクルの考え方を、瞬時に活用し、ケアを提供し、さらに、提供するケアの質の向上を図り続ける看護師こそが自らの行動に責任がとれる「自律した看護師」であると思います。

 2025年に向けて、チーム医療、タスクシフト、タスクシェアリングの重要性が強調される時代です。かつていわれた「指示待ち看護師」「責任を取りたがらない看護師」のままでは、胸をはってチーム医療の一員、チーム医療のキーパーソンとはいえないと思っています。

 また「自律」の文字が示すように「自分を律する」ことも「自律した看護師」の重要な要件だと思っております。自らの健康状態、感情等を自分自身でコントロールしていくことも職業人としての大事な一面だと思います。看護職は、医療職の中で、最もコミュニケーションスキルに長けた職種だと自負しております。良好なコミュニケーションを図るためにも、精神面のコントロールができることも大切なことだと思います。少なくとも、職場では、感情の起伏が大きい人だと思わせるような行動を慎む必要があると思います。

 最近、組織としての「自律」を考えさせられる場面に遭遇することが間々あります。組織のリーダーとして「組織としての自律」「自律した組織」を常に念頭に入れて行動しなければと自重しています。

 NP(ナース・プラクティショナー)の研修でハワイに行った時に、NPの方が、医師は、患者さんたちから「尊敬される存在」であり、私たち看護職は「信頼される存在」であるといわれたことがとっても印象的でした。信頼される存在であるために、つねに、自律している看護師を追求していきましょう。

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