会長のマンスリーメッセージ

会長マンスリー
2017.03

診療報酬・介護報酬の同時改定(2018年)に向けて

少子・超高齢社会を迎えた日本の医療・介護保険制度の安定的な確保を目指して、2025年をターゲットとし、医療・介護を中心とした社会保障制度改革が、急速に進められている。 人口の高齢化、医療技術の進歩等に伴い、年々、高騰する日本の医療・介護費の動向を左右する「診療報酬」「介護報酬」の2018年度の同時改定を目前に控え、医療界の動きも活発になっている。 日本の医療が「医師・歯科医師の指示」の基で行われてきたことから、診療報酬は「医科」「歯科」「薬剤」に区分され、看護職によって行われる看護サービスは「入院基本料」(重症度、医療・看護必要度に対応し入院基本料、例えば、一般病棟入院基本料(1日)7対1など)の中に包含されており、看護職の提供する個々の技術・サービスが診療報酬の議論の俎上に載る機会は極めて少かった。 チーム医療の基で「予防し・治し・支える医療」および「地域・在宅医療」にむけて日本の医療の大きな方向転換が図られる中で、2018年の診療報酬の改定にあたっては、患者さんの生活全体を視野に入れた「看護モデル・生活モデル」に従って、看護を提供してきた看護師の役割が極めて重要であることを看護職自身が主張し、看護サービス・技術を、診療報酬上、しっかり位置づけられるように積極的に働きかけていく必要があると痛感している。 手厚い「在宅での看取り」を進めていくためには、訪問看護ステーションを中心とした看護師の役割が不可欠であることは明らかである。近いうちに、看護師による「死亡の確認」も可能になると伺っている。在宅での看護サービス・技術を評価し「訪問看護療養費」の中に取り込んでいくことが、訪問看護師のモチベーションを高めることにも繋がる。 また、平成26年の医療介護総括確保法の成立に伴い、保助看法を改正し「特定行為に係る看護師の研修制度」とし法制化し、看護師を「チーム医療のキーパソン」として位置づけ、役割拡大の第一歩をスタートさせた。このような制度を創設した以上、国は、研修を修了した看護師が提供するサービス・技術を「配置加算」などでしっかり位置づけることも必要とされる。国は、2025年までに、10万人以上の特定行為に係る研修修了生を輩出することを意図しているとのことであるが、診療報酬上での、思い切った手段をとらないとこの目標は到底達することはできないと思われる。 診療報酬は、中央社会保険医療協議会(中医協)の場で議論される。中医協の委員は、診療側委員、支払い側委員、公益委員の三者によって構成されており、診療側の構成委員は、医師、歯科医師、薬剤師とされている。看護職は、医療職の半数以上を占めており「診療の補助行為」は看護師の独占業務であり、医師,歯科医師と並び医療を提供できる医療フタッフである。 「看護の質」が、医療機関の提供する「診療の質」を左右するとの自負・プライドをもって看護職は活動してきた。診療報酬の改定が「日本の診療の質」に直接的、間接的に影響を与えてきたことは明らかである。診療報酬を議論する中医協の場に、看護職が参加し、日本の医療の質確保に貢献できるようになることを強く願っている。
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